大判例

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千葉地方裁判所 昭和26年(行)24号 判決

原告 小島一仁

被告 千葉県教育委員会

一、主  文

被告千葉県教育委員会が原告に対し昭和二五年七月二一日なした休職処分は、これを取消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として

一、原告は、昭和一七年九月慶応義塾大学文学部史学科を卒業し、同二二年四月佐原市立(当時佐原町立)佐原中学校教諭に、次で同二三年四月千葉県立佐原第一高等学校教諭に任命され日本史、西洋史等の授業を担当してきたものであるが、昭和二五年七月二一日被告より改正前の教育公務員特例法三三条、同法施行令九条、地方自治法附則五条、官吏分限令一一条一項四号に基き休職処分に付された。しかし右の処分は、違法である。

二、よつて、原告は、昭和二五年八月四日右処分の取消を求めるため被告に対し公開口頭審理の請求をしたところ、その後三箇月を経過したので本訴請求に及んだ

と陳述し、

被告の主張に対し、改正前の教育公務員特例法一五条三項で準用されている国家公務員法八九条一項によれば、職員に対しその意に反し休職等不利益な処分を行わうとするときは、その処分を行う者は、その職員に対しその処分の際処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない旨規定されているのであるから、処分の具体的事由は、処分説明書に明示されなければならないのにかかわらず、原告が右休職を命ぜられると同時に被告より交付を受けた処分説明書(甲二号証)には単に「官庁事務の都合に依り休職にする」とのみ記載されているにすぎず、右は、処分の事由を説明したものということはできない。

なお、(一)原告は、口頭審理の際具体的事由を記載した処分説明書の交付を求めたが、被告は、これに応じなかつた。(二)原告には被告主張のような具体的事由は存在しない、と答えた。(証拠省略)

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め

答弁として、原告主張事実は、これを認めるが、被告のなした処分は適法である。すなわち処分説明書の記載内容は、「官庁事務の都合」というだけで十分であり、処分の具体的事由を明示する必要はない。仮に、右説明書が説明を欠き不備なものであるとしても、(一)処分説明書は、国家公務員法八九条二項の規定により請求があつたとき交付すれば足りるものと解すべきところ、原告から右請求がなかつたものであり、また(二)処分に相当な具体的事由が真実存在すれば右処分を取消すことはできないと思料するところ、原告には次のような処分に相当する具体的事由があつたものである。すなわち原告は、その主張のように千葉県立佐原第一高等学校教諭として日本史、西洋史を担当していたものであるが、(1)その就任直後である昭和二四年五月二七日頃から同年一〇月頃まで数回にわたり校長の許可なく同校生徒数名を同校講堂に集めインターナシヨナルの歌等を指導し、(2)劇団前進座が同年九月二七日佐原市において民主々義科学者協会佐原支部の主催で共産党員と称する者等の協力の下に開演した際、同校では前進座がすべて共産党員によつて組織され、その興行は、共産党の活動資金を集める目的で全国にわたり巡業し、しかも巧みに入場税を免かれていることが周知されていたので、この演劇に同校生徒に観覧を許すか否かについて職員会議を数回開き協議した結果教員生徒が他の教員生徒に観覧を呼びかけてはならないことに決議しその旨校長から職員生徒一同に知らせ、特に原告に対してはこの趣旨の徹底に協力するように申渡したのであつたのにかかわらず前記協会支部の幹部として参加し校長の許可なくして同校生徒にその広告ポスターを書かせたり、開演に際し同校の校具を無断で持ち出させたり、右協会支部の会員券の形式をとつた前進座の観劇券を同校の内外で同校生徒をして佐原町民に売らせたり、或は香取事務所長等が前進座の入場券脱税計画の疑で千葉地方裁判所の押収令状により入場券その他の物件を押収した際右脱税計画に参加し同志の者等と共に香取地方事務所に出頭し長時間にわたり課税の不当を詰つたりした。

以上の次第であるから、原告の本訴請求は、右いずれの点からしても失当である、と陳述した。(証拠省略)

三、理  由

行政処分は法律を根拠としてなされるのであつて、行政庁が或る処分をするためには法律がありその法律に該当する事実があることが欠くべからざる要件である。そしてその事実がその法律に包摂せられることによつて法律効果としての行政処分が生れるのである。従つて法律効果としての行政処分には根拠となる法律とその法律に該当する事実を示さなければならない。行政処分においては主文とともに法律と事実とから成り立つ理由を必要とするといわれる所以である。本件処分は主文と法律とを示したのみであつてその法律に該当する事実を示していない。このような処分は処分としては瑕疵があり、その瑕疵は取消原因となるものである。

被告は右に述べたような事実を処分の後になつて示したとし処分の後になつて示せば足りるといつているけれども、処分の理由となる事実関係は常に処分と同時に示さなければならないのであつて本件はその例外をなすものではない。

よつて本件処分を取消すべきものとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 高根義三郎 須賀健次郎 山崎宏八)

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